果てしなき不毛の地で、
ふたりの愛と自由は幻と化した
1960年代末、ロサンゼルス。学生集会での虚しい議論に背を向け、マークは拳銃を手に学内で弾圧行為に及ぶ警官隊にひとり立ち向かう。だが発砲のチャンスを逸して逃走、飛行場でセスナを奪い、大空へと飛び立った。一方、L.A.の土地開発会社で秘書を務めるダリアは、アリゾナでの会議に参加するため車を走らせていた。広大な砂漠で運命的に出会ったふたりは「死の谷」(ルビ:デス・ヴァレー)へと向かう。不毛の地が続く異様な景勝地〈ザブリスキー・ポイント〉にたどり着くと、そこには幻のような光景が広がっていた・・・。
巨匠アントニオーニが大国アメリカの過去と
現在を幻視した壮大な黙示録
フェリーニ、ヴィスコンティと並ぶイタリアの巨匠ミケランジェロ・アントニオーニは、『夜』(1961)でベルリン映画祭・金熊賞、『赤い砂漠』(1964)でヴェネツィア映画祭・金獅子賞、『欲望』(1966)でカンヌ映画祭・パルムドールを受賞。1960年代、世界三大映画祭のすべての最高賞を獲得し、文字通り映画界の頂点に立った。このイタリアの巨匠がアメリカのメジャー・スタジMGMから潤沢な予算を得て、全世界注視の下に完成させた超大作が『砂丘』(1970)だ。
アメリカの、現在まで続く政治的混乱と自由の名のもとに発展する資本優位の消費社会をクールな視点で描いたこの作品は、初公開時、アメリカでは不当な低評価に終わった。だが近年、そのアメリカのとらえ方は、鮮烈極まりない色彩感覚とスケール感あふれるスペクタクル的な側面も合わせ、世界的に評価が高まっている。
時間が静止したかのように広がる砂漠の風景、大量生産/大量消費を煽る広告と看板の氾濫、そしてそれら全てを一気に破壊する映画史上空前の大爆発―『砂丘』は、今や忘れられたイタリアの巨匠がアメリカの過去と現在を幻視した壮大な黙示録であり、後の『パリ、テキサス』(1984)にも連なる〈異邦人が視たアメリカ〉の先駆けとなった野心作であり、重要作だ。
キャスト:マーク・フレチェット、ダリア・ハルプリン、ロッド・テイラー
監督・脚本︓ミケランジェロ・アントニオーニ 製作︓カルロ・ポンティ 脚本︓フレッド・ガードナー サム・シェパード トニーノ・グエッラ クレア・ペプロー
撮影監督︓アルフィオ・コンティーニ 美術デザイン︓ディーン・タヴォラリス 編集協⼒︓フランコ・アルカッリ
⾳楽作曲・演奏︓ピンク・フロイド ジェリー・ガルシア カレイドスコープ ジョン・フェイヒー ザ・グレイトフル・デッド ロスコー・ホルコム パティ・ペイジ ローリング・ストーンズ ザ・ヤングブラッズ
MGM提供 カルロ・ポンティ制作 原題 MICHELANGELO ANTONIONIʼS ZABRISKIE POINT
提供︓キングレコード 配給︓コピアポア・フィルム
1970年|アメリカ|カラー|スコープサイズ|モノラル|上映時間︓113分
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